フーゾク探偵、韓国でアガシにおぼれるpart1

季節は2月だ。北国では白い悪魔のように大雪が続いているという。
しかし、僕はあの日から、しばらく上機嫌だ。あの日とは、会社の慰安旅行である。
興信所だってちゃんとした会社だ。だから慰安旅行だってある。1年で最も仕事の依頼が減る2月が当社の慰安旅行月だ。今年は2泊3日の韓国旅行だった。
その韓国旅行で僕の韓国に対する認識は大きく変わった。韓国はキムチの国ではない。キムチ(気持ち)いい国である。
あれ、柄にもなく、ダジャレをつぶやいてしまった。まるで通天閣先輩みたいに。それほど僕は慰安旅行以降、かなり浮かれているのだ。

羽田から仁川空港まで約2時間半のフライト。空港からは高速バスでソウル市内へ向かった。
バスの中で後輩のK君がにやけた顔で質問してきた。
「先輩はやっぱりアガシとデートですか? 最後はアガシとバッコンバッコンして朝起きたら、アガシがキムチチャーハンをつくってくれる…なんてコース、いいすっよね。僕も連れていってくださいよぉ」
K君は、僕のことを完全に風俗専門の探偵だと勘違いしている。だいたいのところは間違ってはいないけど、完全な正解ではない。僕が風俗店を好んで出かけているのではなく、内偵すべき相手に風俗関係者が多いということだ。

初日の観光スケジュールのラストは、明洞(ミョンドン)での焼肉三昧。何を食ってもうまくて堪能した。日本ではそれほど口にしないキムチですら絶品だった。
その後、みんなでホテルに入ったのが午後8時。僕はすかさずアガシ派遣所に電話をした。若い男性が電話に出た。僕は韓国語で「日本語のできるMさんにかわってくれ」と依頼した。すぐにMさんに代わった。
Mさんは以前、日本で仕事をしていた、ちょっとヤバい系の韓国人だ。日本語が堪能なのはそういう理由からだ。僕は彼に協力を仰いで、仕事を成功に導いたことがあった。だから彼は恩人でもあった。

「ご無沙汰しています。竿筋です。お元気ですか?」
「ああ。竿筋君か。メールをもらっていたから、そろそろ到着かと思っていたところだ。慰安旅行とは君の会社はもうかっているんだねぇ。ま、それはさておき、アガシは君が泊まるホテルの隣にある○○○ホテルのロビーに全部で4名を派遣する。好みのアガシを選んでくれたまえ」
僕はMさんに感謝の言葉を述べ、電話を切った。そして隣のホテルへ向かった。

ロビーラウンジに派手な格好をした女性が4名座っていた。若い男がカタコトの日本語で「シャチョウサン、ドノコモ、アサマデ、オナジリョウキンヨ」とささやいた。
僕は「少女時代」のユナによく似た娘を指名した。スラリと伸びた脚と白い肌が印象的な美人だ。4人の中では最も静かで、大人しいように見えた。
それは、僕の大きなカン違いだったとわかったのは、それから数時間後のことだった。

韓国の「紹介アガシ」は、エスコートガール兼風俗嬢だ。ガイドや通訳をしてくれ、一緒に食事をし、一緒にベッドに入る。そういうことを仕事にしている。
僕は若い男に代金を払い、さっそく彼女を連れだした。彼女は「スヨン」と名乗った。
「スヨンか、いい名前だ。まず、この近くで流行っているスイーツの店へ連れてってくれ。もちろん、君の好きな店にね」
「お客さん、ウレシイ」
スヨンはそう言って僕の腕を引っ張り、ホテルの外へ出た。

スヨンが連れていってくれたのはアイスクリーム店だった。ここが今、韓国の女性に大人気の店だという。たしかに行列ができていた。
ソウル市内で仕事をする派遣アガシは、英語、中国語、そして日本語を話す娘が多い。外国語を話すことができれば、それだけギャラがアップするからだ。
スヨンの日本語は、日本でも活躍する歌手のBoAと同じくらい上手だった。
「お客さんは渋くてカッコイイ。わたしはファザーコンプレックスで、年上の男性が好き。頼りになるし、甘えさせてくれる。今日はやさしくしてください」
そう言って彼女は僕の肩に顔を寄せ、甘えるしぐさをした。演技なのか、素なのか、よくわからないが、とてもかわいい娘であることだけは事実だ。

その後、彼女に案内され、しゃれたカフェで軽くアルコールを口にした。まわりは若いカップルばかりだった。日本人のおやじと韓国人の若くて美人の娘というカップルは、注目を集めた。
「スヨン、どうやら僕たちは目立っているようだね」
「お客さんがカッコイイからよ。日本のスターだと思っているのかもしれないよ」
スヨンはすっかり僕の気持ちをつかんでいた。

そして、一緒にホテルへ戻り、部屋に入った。僕が先にシャワーをあびた。スヨンは少し酔っぱらっているように見えた。