風俗嬢の送迎ドライバーが体験した「恋愛と商売のあいだ」 Part3

どれくらいの時間、ぼーっとしていたのだろうか。ホテルまでクルマを走らせ、路肩に止め、ユズからの連絡を待った。延長するときは事務所と俺のケイタイに連絡が入ることになっている。やがてユズから「終わりました。これから部屋を出ます」という連絡が入った。少し弾んだ声だった。
ホテルから出てきたユズはクルマに乗り込むやいなや、すぐにしゃべり始めた。「今日のお客さん、ロマンスグレーのおじさまで素敵だったわ」
俺はロマンスグレーに嫉妬を覚えたが、「あっ、そう。運命の出会いだったかな?」と茶化すように質問した。「えっ、やだっ。肌が合うっていうのかな。おじさまなのに、ちょっとも不潔なところがなくて…ユズ、本気でイキそうだった」
俺は踏まなくてもいいのに急ブレーキを踏みそうになった。暴走しそうな俺自身の心にブレーキをかけようとしたのだ。
「ところで、コースケさん、何か妙な匂いがしない?」
俺は焦った。助手席の下に精液をふきとったティッシュをまるめて投げ込んでいたからだ。ユズは風俗のプロ。嗅覚がすぐれていれば、それが精液の匂いであることがすぐにわかったはず。俺は恥ずかしさでいっぱいになった。気まずい沈黙の時間が流れた。
店の女の子が待機するマンションまで送り届けた時、俺は遂にギアチェンジして口を開いた。「俺、ユズを見ていると辛いんだ…。そばで指をくわえて見ているだけだから…」。ユズはきょとんとした顔で聞いていたが、すぐに笑い声をあげた。
「…なるほどそういうことなのね。でも、嬉しいわ。来週から店のナンバーワンのユズの常連さんだけにディスカウントセールが始まるの。すごいでしょ。コースケさんも常連さんってことにしてあげるから、私を想像して隠れてシコシコしてるんだったら、その指でネット予約しておいて。ン千円安くなるのよ。もちろん偽名でね…じゃあ、よろしく」
そう言ってユズはクルマを降りた。彼女には俺の気持ちのうち下心だけが伝わったようだ。そして俺までも客にしようと誘う。彼女のような風俗嬢を「プロ」と呼ぶのかもしれない。店長もユズの客だったりして。
ところで、俺がユズを指名したら、誰が送迎ドライバーになるんだよ。えっ、俺が自分で運転するのか…。俺が客の俺と商品のユズを運び、客の俺に届け、俺はユズに金を払い、終わったらまたデリバリードライバーとしてユズをマンションまで届ける? 
それから俺はモンモンとした日々を送っている。