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前略、女王様。 Part2
未蘭女王様……いや、今、現役を引退されたので、あえて未蘭さんと呼びます。ボクが未蘭さんとお会いしたのは今から5年前の夏のことです。
当時、ボクはフリーライターとして某実話誌で風俗記事を担当していましたね。初めての取材はプレイの体験取材でした。雑誌なので、写真だけなのでポーズだけ、つまり、“するフリ”だけでイイですよ……と伝えたのにも関わらず、思い切り鞭で叩きましたね。
「当たり前でしょ? 読者には真実を伝えなくちゃいけないんだから!」
そう言う未蘭さんの目は、どこかイタズラっ子のようで確信犯だとわかりました。まぁ、ボクもMなので正直、嬉しかったんですけど(笑)。
そんなボクの本質を見抜いたのでしょう。あなたは予定には無かった蝋燭責めや亀甲縛りで、さらに責めましたね。
その帰り道のことです。撮影現場のホテルからお店の事務所が入っているマンションまで一緒に歩きましたが、その時に道玄坂を通ったときのことです。
「ねえ、なんで、この坂を道玄坂っていうか知ってる?」
未蘭さんはおもむろに、聞いてきました。もちろん、ボクはその答えを知りません。
「あんた、風俗ライターをやってて、そんなことも知らないの? この地域(道玄坂)って今も風俗店が多いじゃない? これって、その昔、この周辺に遊郭があった名残なんだけど。だから、この坂も、当時から、その“道”、つまり風俗の“玄”人が行き来する坂という意味で道玄坂になったのよ」
ふ~ん、そうなんですか~。ボクは未蘭さんの博識に唸るばかりでした。やっぱ、女王様たるもの、テクニックだけではなく知性も兼ね備えていないとな~と、納得したものです。
「さすがですね~。せっかく奴隷になるんでしたら知的な女王様のほうがいいですもんね!」
ボクがそう言うと、少し照れたようにニヤリと笑う表情がイロっぽく、気付けばボクはあなたに惹かれていました。
しかし……この道元坂の由来を、ある雑誌に書いたところ、そこの編集長から大目玉をくらったものです。
「オマエ、うそついてんじゃねえよ! 道玄坂はな、あの近所に道玄庵っていう寺があったことに由来すんだよ!」
そう言われました。えぇ、ボクは未蘭さんに騙されていたのです。後日、そのことを問いただすと、あなたはこう言いましたね。
「私は騙してないわよ。あなたが騙されたのよ。それに、何でもかんでも鵜呑みにするなんて……あなたのその素直さ、調教しがい、あるかもね、うふふ」
えぇ、ボクは最初からあなたの手のひらで弄ばれる運命だったのでしょう。
その後、何度もお仕事でご一緒しましたね。思えば、そのたびに気持ちいい……いや、ヒドイ目に遭ったものです。
たとえば、ある風俗情報誌の取材中のこと。その時はラブホテルではなく、某シティホテルでの取材でしたね。その時は未蘭さん一人のショットを撮影すればOKだったのに、なぜか、あなたは“M男役のモデルが欲しい”と言い出しました。もちろん、ボクの出番です。パンツ1枚にさせられたボクは四つん這いになり、未蘭さんの踏み台役になりました。しかし、私は思ったのです。あなたはなんて優しい女性なのだろうと。と、言いますのも、ピンヒールを履いていたのですが、思い切り踏まず軽く足を添える程度でした。つまり、片足でバランスを取っていたのです、不安定なピンヒールで……。おかげで、カメラマン曰く、迫真のショットが撮れたそうで、誌面のクオリティも上がる結果になりました。そのことを伝えると、あなたはこう言いましたね。
「そりゃあ、“プロ”として当然じゃん。それにさ……アタシ、思うんだけど、SMのSってサービスのSってことでもあるんだよね……」
サラリと言ってのけたその姿、かっこよかったです。そして、その優しい心遣いに女王様以前に女性としての優しさを感じました。しかし、この優しさはまやかしだったのでしょうか。
あなたは、いきなり部屋のドアを開けて、脱いだピンヒールを廊下に投げて、“取ってきて!”と命令されましたよね。その後の結果はわかってました。でも、拾いに行きましたよね、あなたのピンヒールを。パンツ1枚で……。案の定、あなたはドアを閉めましたね。ボクはパンツ一枚でピンヒールを持っている、なんともマヌケな姿でホテルの廊下に放置されました。改めて書きますが、そのホテル、一般客も使用するシティホテルですよ!? 向かいの部屋にステイしていた外国人客がゲラゲラ笑って通り過ぎたじゃないですか!そして、ドアの向こうで未蘭さん自身もカメラマンとゲラゲラ笑ってましたよね……。
それだけじゃ済みませんでしたね。未蘭さん、やっとのことで部屋に入れてくれた後、あなたは何をしたか覚えてますか? いや、覚えてないとは言わせません。
「ごめんね…あなたみたいコを見てると、ちょっとイジメたくなるの……。恥ずかしい思いさせちゃって、ごめんね」
そう言いながらハグしてくれましたね。まさに飴と鞭です。ボクはいつも女王様然しているあなたの素直な態度に驚いてしまったのです。でも、それはワナでしたね。驚いている隙にあなたはボクの首筋に真っ赤ルージュのキスマークをつけていたのです。気付きませんでした。帰りの電車の中で、イロイロな人から注目を集めてるな~、なんて思いましたが。気付いたのは帰宅してからです。当時、同棲していた彼女がいきなり、ビンタして気付かせてくれました。キスマークだけではなく、手のひらの形までマーキングされました。でも、そのことを伝えると未蘭さんはわざわざ電話でボクの彼女に謝ってくれましたね。そういう潔さは凛々しくもあり、あなたのことをより好きになってしまいました。




